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ロシアでの「地方行政単位」と「都市」とは

ロシアにおける地方行政単位

連邦構成体 (ロシア連邦構成主体 субъект российской Федерации

ロシア連邦の地方自治制度における行政単位は,共和国 Республика[リスプーブリカ],地方край[クラーイ],область[オーブラスチ]自治州 автономная область[アフタノームナヤ オーブラスチ]自治管区 автономный округ[アフタノームヌイ オークルク],と呼ばれる連邦構成体 субъект Федерации[スブイェークト フィディラーツィー]を基本としています。

日本の47都道府県とロシアの連邦構成体を比べると,日本のそれは「都道府県」という,名称の違いやその規模の違いこそあれ,ほぼ同質の行政区画として存在しているのに対し,ロシアの83ある連邦構成体には,多民族国家ロシアを象徴する,ロシア人以外の民族集団のエスニックな単位としての「共和国」,「自治州」,「自治管区」があり,それ以外のロシア人が絶対多数を占める地域は,地理的に「州」に分割し,辺境に位置しロシア人が絶対多数ながらも多民族が入り混じる地域を「地方」(直訳すれば「辺区」)としており,全く異質な行政単位によって区画されていると言っても過言ではないでしょう。

現在のロシア連邦にある83の連邦構成体の内訳は,共和国21,自治州1,自治管区4,地方9,州46となり,2大都市のモスクワとサンクト=ペテルブルグは州から独立した連邦直属の市となっています。

連邦構成体の種類による区分図  2008年3月1日より

共和国(21) 自治州(1) 自治管区(4) 地方(9) 州(46) 2大都市(2)

連邦構成体数の変遷
変更年月日 経緯 総数
 1990年6月12日 ロシア連邦国家主権宣言時 88
 1992年12月10日 チェチェン=イングーシ共和国をチェチェン共和国とイングーシ共和国に分立 89
 2005年12月1日 ペルミ州とコミ=ペルミャク自治管区を統合しペルミ地方を創設 88
 2007年1月1日 エヴェンキ自治管区とタイミール自治管区をクラスノヤルスク地方に統合 86
 2007年7月1日 カムチャツカ州とコリャーク自治管区を統合しカムチャツカ地方を創設 85
 2008年1月1日 ウスチ=オルダ・ブリャート自治管区をイルクーツク州に統合 84
 2008年3月1日 チタ州とアガ・ブリャート自治管区を統合しザバイカリエ地方を創設 83


連邦構成体の下部区画

連邦構成体の内部には,直轄市地区(日本の市と郡に相当)があり,更に地区の下には,Посёлок городского типа [パショーロク ガラツカヴァ チーパ](直訳すれば「都市型集落」)と、幾つかの農村集落からなる村ソビエトсельсовет[セリサヴェート]があります。
なお,ロシアの2大都市,モスクワ市とサンクト=ペテルブルク市は州から独立した連邦直轄市で,連邦構成体に数えられます。

ロシアの自治単位の概略図




ロシアにおける都市とは

ロシアの人口統計を見ていると,人口構成を都市人口農村人口とに分類しています。
日本で「都市人口」といえば,それは「市域」に居住する人口、という印象を受けますが,ロシアでは事情が違うようです。
では,ロシアでは都市とは何なのかを,人口統計の視点から見ていきましょう。

まず,ロシアにはロシア語で Город [ゴーラト] と称されるがあります。しかし各州などの人口統計では,各市の人口数の合計値では,都市人口の数値より少なくなります。都市人口数と一致させるには,市の他に
Посёлок городского типа [パショーロク ガラツカヴァ チーパ] と呼ばれる(便宜上,そう訳しておきます。直訳すれば「都市型集落」です)の人口を加える必要があります。
そのことから,ロシアでは都市とはおよびのことであると分ります。

都市になる要件としては,就業構成として総人口の85%以上が労働者・勤労者(非農業従事者)とその家族であること,人口規模としては「市」が1万2千人以上,「町」が3千人以上とされているが,人口5千人に満たない市や数百人の町も数多く存在しています。就業構成や人口規模以外にも行政上の意義,産業や文化,生活施設網の発展度も考慮されるようです。
極端な例としては,イングーシ共和国に2000年に建設された新首都マガス市は,2002年国勢調査時点で人口わずか275人と記録されています。「行政上の意義」を考慮した市制施行の典型でしょうか。
なお,「町」にも厳密には「労働者町 рабочий посёлок」「別荘町 дачный посёлок」などの種類があるとされています。

一方,人口30万人以上の大都市では、その内部に行政区を設け,幾つかに区分けされているものがほとんどです。

市の格付けで大きいものから分類すれば

(1) 市そのものが独立した連邦構成体となる2大都市モスクワ市サンクト=ペテルブルク市
(2) 連邦構成体に直属する(共和国、地方、自治州、自治管区)直轄市
(3) 連邦構成体の下部に設けられた地区(または他市)に属する市
の3つに分類されます。
またその他に特殊な例として,軍需産業・研究などを目的として建設された
(4) 閉鎖行政地域組織に属する閉鎖市
があります。

都市人口統計をみて複雑と感じるのは,「都市の人口」は必ずしも「市の行政区域の人口」ではないことです。
市の中には、その市本来の領域の外部に市の管轄する区域を有するものがあり,これをソ連時代には市ソビエト горсовет [ガルサヴェート] と呼ばれていました。
これらの「市の行政区域」の中には,「都市地域」と「農村地域」が含まれ,都市人口統計に出てくる市の人口はそのうちの「都市地域」の人口です。また「市の行政区域」の中に複数の「都市」が含まれる「市」もあります。その場合には人口統計上は別個の都市として扱われます。
例えば連邦構成体としてのモスクワ市には,2002年までその市域に2つの市,モスクワ市とゼレノグラード市(飛び地),更に3つの町,ヴォストーチヌイ町,ネクラソフカ町,ヴヌコヴォ町(それぞれ飛び地)がありました。
2002年10月9日実施の国勢調査では,連邦構成体モスクワ市の人口(10,382,754人)と,都市としてのモスクワ市の人口(10,126,424人)に差があったのはこのためです。
但し,同年の国勢調査後にこれらの市町はすべてモスクワ市に統合され,現在では「連邦構成体」モスクワ市と「市」としてのモスクワ市とは完全に一致しています。

一方,町(都市型集落)については閉鎖行政地域組織に属するものを除けば,ほとんどが地区(または他の直轄市)に属しています。



都市数の変遷
調査時期 都市型集落 総数
 1926年12月17日現在 461 702 1,163
 1939年1月17日現在 574 743 1,317
 1959年1月15日現在 877 1,495 2,372
 1970年1月15日現在 969 1,869 2,838
 1979年1月17日現在 999 2,046 3,045
 1989年1月12日現在 1,037 2,193 3,230
 1996年1月1日現在 1,087 2,022 3,109
 2002年10月9日現在 1,098 1,842 2,940
 2003年1月1日現在 1,097 1,835 2,932
 2004年1月1日現在 1,097 1,793 2,890
 2005年1月1日現在 1,099 1,461 2,560
 2006年1月1日現在 1,095 1,359 2,454
 2007年1月1日現在 1,095 1,348 2,443
 2008年1月1日現在 1,096 1,361 2,457
 2009年1月1日現在 1,099 1,318 2,417

関連ページ
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